「自筆証書遺言の保管制度」の利用料が明らかになりました。
平成30年7月6日に改正相続法が成立し、相続法に関しては約40年ぶりの大改正が行われることになりました。施行は昨年と今年で段階的に行われていっていますが、その最後が今年7月10日施行予定の「自筆証書遺言の保管制度」です。この制度により、これまで遺言者本人が自己責任で保管しなければならなかった作成済みの自筆証書遺言を、全国の法務局で保管してもらえるようになります(当相続レポート『2020/2/20号』をご参照ください)。
この保管制度の利用には一定の手数料が必要になることが分かっていましたが、令和2年3月23日に、「法務局における遺言書の保管等に関する法律関係手数料令」が公布され、手数料の額が正式に下記のとおりに定められました。
思ったより高いのか安いのか、感覚は人それぞれでしょう。
表中の「遺言書の閲覧の請求(原本)」というのは、文字通り遺言書の原本を閲覧するもので、これは原本を保管している法務局(=遺言者本人が保管申請をした法務局)でしかできません。
一方で、「遺言書の閲覧の請求(モニター)」とは、遺言書保管ファイルの記録を閲覧するもので、全国全ての法務局で閲覧が可能です。
遺言書保管ファイルには、
①遺言書の画像情報
②遺言書に記載されている作成の年月日
③遺言者の氏名、出生の年月日、住所及び本籍(外国人にあっては、国籍)
④遺言書に次に掲げる者の記載があるときは、その氏名又は名称及び住所
イ 受遺者
ロ 遺言執行者
⑤ 遺言書の保管を開始した年月日
⑥ 遺言書が保管されている遺言書保管所の名称及び保管番号
が記録されています。
なお、遺言者本人が保管申請後に「遺言書の保管を撤回」する場合は、特に手数料は掛からないことになっています。ただし、これはあくまでも「保管の撤回」であって、それだけでは遺言書自体を撤回したことにはなりません。
もし遺言書自体を撤回したい場合は、保管を撤回して返還された自筆証書遺言の原本を破棄したり、新たな遺言書を作成したりしなければならないことに注意しておきましょう。
こうしてみてくると、この自筆証書遺言の保管制度を利用すれば、公正証書遺言よりも安価に済み、また従来の自筆証書遺言(=自己責任で保管)よりも確実(保管申請時に外形的要件を法務局が確認、紛失無し、関係者による破棄・隠匿の恐れ無し)で、理想的なように感じるかもしれません。
しかし、遺言の内容自体を法務局がチェックするわけではないので、内容不備で無効となったり実際の相続手続きに使えないといった事態になったりするリスクがあります。また、遺言作成時の遺言能力の存否に対する信頼性や、遺言者の死亡から遺言執行までの迅速性にも一定の疑問が残ります。
やはり、安心・安全・確実な遺言書を望むなら公正証書遺言がベストであることは今後とも変わりません。
当社では、弁護士・司法書士などの専門家と共に、公正証書遺言の作成に関するご相談は勿論、作成のお手伝いも積極的に行っております。まずはお気軽にご連絡ください。