今回は、2018年6月20日公開 ★相続法改正~①自筆証書遺言の方式緩和~を
の2020年度の内容に更新しました。
※赤字部分が更新箇所になります。
平成30年7月6日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が成立し、同年7月13日に公布されました。「改正相続法」と言われるもので、約40年ぶりの大改正です。
改正法案の主な内容としては、①自筆証書遺言の方式緩和、②配偶者の権利保護、③遺留分制度の見直しです。
今回は、①自筆証書遺言の方式緩和についてお話ししていきます。自筆証書遺言とは、遺言者がその全文・日付・氏名を自署し、押印することによって作成される遺言のことです。主な改正点としては以下の3点です。
一、自筆証書遺言の方式の緩和
財産目録の作成はとても煩雑で時間のかかるものですが、本改正により、パソコンで財産目録を作成できるようになると、手書きの面倒臭さが減り、記載内容の不備により無効となる危険も減ることでしょう。
★自筆証書遺言の方式緩和は、2019年1月13日から施行されています。
また、施行前(2019年1月13日より前)に作成された自筆証書遺言には、上記規定は適用されません(改正法附則6条)。あくまで2019年1月13日以降に作成する遺言書でなければならないので注意が必要です。
二、法務局による遺言書の保管制度の創設
★遺言書の保管制度は、2020年7月10日から施行されます。施行前(2020年7月10日より前)に自筆証書遺言を法務局に提出しても受理されないので注意が必要です。
遺言者本人が法務局(遺言保管所)に出頭し、自筆証書遺言の保管を申請します。提出された自筆証書遺言は、法律上の要件を形式的に満たしているか確認され、原本を保管したうえで画像データとして記録されます。厳格な本人確認が求められるので、代理人による申請は認められません。
遺言書の保管の申請ができる法務局は下記のとおりです。
・遺言者の住所地を管轄する法務局
・遺言者の本籍地を管轄する法務局
・遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局
相続開始後は、相続人は、遺言書の保管の有無に関する証明書の交付が受けられ(遺言書保管事実証明書)、遺言書の原本の閲覧請求と遺言書の画像情報等を用いた証明書の請求ができます。いずれも遺言者が亡くなった後でなければできません。
遺言書の有無の確認と画像データの確認は全国どこの法務局でも申請ができ、遺言書の原本の閲覧請求は、遺言書が保管されている法務局に対してしかすることができません。
遺言書の原本の閲覧請求や画像データの確認の申請が行われると、法務局から全ての相続人に対して遺言書を保管していることが通知されます。
遺言書保管所において保管されている遺言書については、家庭裁判所での検認が不要となります。
遺言書の保管の申請、遺言書の原本の閲覧請求、遺言書情報証明書・遺言書保管事実証明書の交付請求をするには、政令で定められた手数料を納付しなければなりません。また、納付は、現金ではなく収入印紙で納付しなければなりません。金額については現段階では未定です。
三、検認手続きの省略
検認手続とは、家庭裁判所が相続人立会いのもとで、遺言書を開封し、遺言書の内容を確認することです。相続人に対し、遺言の内容を知らせるとともに、後日偽造や変造が出来ないように内容を明確にすることを目的とした手続きです。
まとめ
今回の法改正により、自筆証書遺言の記載内容の不備や紛失、偽造等のおそれが大幅に減り、保管場所が確保され、検認手続も不要となることから、今後自筆証書遺言の利便性は格段に向上することが考えられます。
また、財産目録の作成がパソコン等でできるようになることにより、財産目録の作成を専門家に委託することも可能になります。