皆様、土地家屋調査士という国家資格をご存じでしょうか?土地家屋調査士とは、不動産の登記簿(登記記録)の「表題部」の新設、変更・更正、閉鎖等の代理申請を行う土地建物の表示登記の専門家です。
■Q■「隣接地の所有者とは長年境界をめぐり揉めていましたが、こちらの所有地と思える場所に、こちらの抗議を聞かずに、一方的に境界杭を設置してしまいました。このまま放置して良いものか、境界杭を取り除いてよいのか分かりません。」
■A■
隣接地の所有者が勝手に境界杭を設置したから直ぐにそれが境界と確定するわけではありませんし、所有権の境も直ぐにその場所に決まるわけでもありません。しかし、境界杭を設置したということは、隣接地の所有者がそこまでが自分の土地だという強い意思表示であるため、放置してしまい一定期間が過ぎるとそれを認めたものとされる可能性が出てきます。また、第三者に転売されると所謂善意の第三者となりその場所をめぐり争いが複雑になっていきますので、早めに対処を行った方がよいといえます。
対処といってもその境界杭をこちらが勝手に抜き取ってしまうことは問題があります。そもそも境界杭は隣接地の所有者の所有物ですし、何かしらの根拠を元に主張する場所に設置されているだろうから、もしかしたら正当な場所に設置されているかもしれませんので、勝手に抜き取ると境界毀損罪といった罪に該当してしまうかもしれません。よって、まずはお近くの土地家屋調査士に相談をして、資料調査、現地調査を行ってもらい、問題の境界杭の根拠の有無や信憑性等を調べる所から始めるとよいと思います。
その後の方策としては
●土地家屋調査士に正式にこちらの土地の境界確定測量を依頼し、隣接地の所有者に境界立会を打診する。
●立会を行って隣接地の所有者がこちらの意見を聞き入れず、境界杭を正しい場所に移動出来ないのであれば、筆界特定制度を利用し法務局に当該場所の境界(筆界)を特定してもらう。
※筆界特定制度の利用に関しては、本ブログ2021年4月と7月に投稿しておりますので、そちらをご覧下さい。
●この時点で土地の所有権にも争いがありそうであれば、筆界特定制度利用の前に全国の土地家屋調査士会のADR境界問題相談センターや弁護士さんにも相談する。
※境界の争いには、筆界(=元々の境界線)と所有権界(=当事者間の合意や時効取得等により線が変更するもの)の争いがあり、これらを明確にしながら解決を進める必要があります。筆界特定制度では、筆界のみを特定させるものであり、所有権界については扱いませんので、注意が必要です。
私自身土地家屋調査士を何年も行っておりますと、隣地との争いで善人が損をしたケースを何度も見てきました。土地の境界は基本的には自己管理です。帰省で実家に帰った時など大切な土地を守るという意味で、ご家族で境界について話しをされることもとても大事な事と思います。
お困りの時は、お近くの土地家屋調査士にご相談されてください。