バイクに乗っているとオービスでは捕まらない、というのは有名な話です。
しかし、何回も繰り返し同じ場所でスピード違反をし、カメラに向かってピースサインまでしたらどうでしょうか?
当局の職員も人間です。威信をかけて捕まえるに決まっています。
税務署も同じです。阿漕な節税をしすぎると税務署に対する挑発と見られて取っちめられてしまいます。
2022年4月19日に「相続した不動産の評価を鑑定評価とする」という最高裁の判決が出ました。
その理由として「相続税の節税のみを目的として不動産を購入したため」ということが述べられました。
事件の詳細については5月10日の山方先生のメルマガに記載がありますので、ご一読いただければ幸いです。
あなたの相続税対策は大丈夫? 最高裁で新たな判決が出ました!
これから相続税が発生する見込みの方で、最近不動産を購入された方は戦々恐々とされているかもしれません。
しかし、個人的な見解としては、一般的な相続税の案件についての影響は少ないのではないかと考えております。
理由は以下の通りです。
①今回の最高裁の事例は、91歳になって急に不動産賃貸業を始めた、相続税額が0円になった、相続税申告期限の直前に購入した物件を売却したなど異常性が目立つため、他の一般的な相続税の案件にまで適用されるとは考えにくいこと。
②全ての相続税について鑑定評価を採用するとなると、財産評価基本通達が無意味になってしまうこと。
③税務署側が鑑定評価を持ち出した場合に、納税者側が出した鑑定評価と争うことになるので時間と手間がかかり現実的ではないこと。
今後は不動産を購入する理由で節税以外の部分というのも大事なポイントになりそうです。いくつか考えられる理由を挙げておきます。
・更地や農地のままだと収益性が低いのでアパートを建築した
・相続人3人に対し収益物件が2棟しかないのでバランスを取るために1棟購入した
・相続人の数と棟数はあっているが、部屋数(又は築年数)のバランスが取れないので購入した
・5棟10室以上の事業的規模を満たして不動産賃貸業を本格的にやっていくため購入した (事業的規模にして所得税の節税メリットを受けるため、は良くないと思います。)
・手持ちの物件が古いのばかりになって収益性が落ちてきたので、新しい物件に助けてもらうために購入した
売却の際も注意が必要です。
短期的な所有だと相続税節税のためと見なされてしまうので、できるだけ長期的な保有が望ましいと思います。
少なくとも税務調査が行われるまでは保有しないと、今回の最高裁判例の二の舞になりそうです。
税務調査は相続税の申告期限から概ね2年、亡くなられてからだと3年以内にほぼ来ます。
どうしても短期で売却する場合は、何かしらの理由づけが必要になりそうです。
・相続税の納税資金や他の相続人への遺留分・代償財産を捻出するため
・相場が上がっていて高い時に売却した方が利益になるため
・収益性が下がってきていて、ある程度のところで損切りした方が有利なため
・大規模修繕やエレベーター交換など大きな出費が控えていて、その前に売却すれば出費が抑えられるため
これは個人的な体感ですが、相続税の節税のために不動産を購入することは少なくないと思われます。但し、不動産賃貸業としてのビジネスが「主」で、節税は「客」でなければいけないと考えています。
私が言うのも変ですが、税金は利益や資産の何割かだけにかかるので身ぐるみはがされるわけではありません。利益や資産を増やし、ある程度の節税はしながらしっかり納税していきましょう。