民法改正により、改正後(令和4年4月1日以後)は、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられます。相続や贈与に関する民法・税法の中でも20歳を基準としている規定が幾つかあり、改正によりこれが18歳へ引き下げられますので、主なものをここで確認しておきましょう。
【相続税の未成年者控除】
現状、相続開始日時点で20歳未満である相続人は、20歳に達するまでの年数(1年未満の端数は切り上げ)に10万円を乗じた金額を、自分が負担する相続税額から控除してもらえます。これが、改正後に開始した相続の場合は、18歳に達するまでの年数に10万円を乗じた金額が控除されることになります。現状と比べて、17歳以下の相続人は控除額が2年分(20万円)少なくなり、18歳・19歳の相続人は控除が全く受けられなくなるということですから、その分増税になります。
【暦年課税制度】
現状、20歳以上の者が直系尊属(父母や祖父母など)から暦年課税制度で贈与を受けた場合、通常の贈与税の税率よりも安い特例税率が使えます。改正後の贈与分からは、この特例税率が使える受贈者の年齢要件が18歳以上へと引き下げられます。
【相続時精算課税制度】
相続時精算課税制度は、原則60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度です。改正後の贈与分からは、受贈者の年齢要件が18歳以上とされますので、従来よりも2年早くこの制度を使うことができるようになります。
【住宅取得等資金の一括贈与の非課税制度】
現状、20歳以上の者が、父母や祖父母など直系尊属から金銭の贈与を受けてマイホームの新築、取得又は増改築等の対価に充てた場合、一定の要件を満たすときは、贈与された金銭について一定額までは贈与税が非課税となっています。この受贈者の年齢要件が、改正後の贈与分から18歳以上に引き下げられます。
なお、贈与税が非課税となる贈与限度額は、受贈者が取得する住宅が一定の耐震・省エネ基準を満たしたものである場合は1,000万円、それ以外の場合は500万円になる見込みです(非課税限度額は令和4年度税制改正案によるもので、法案は今国会で成立の見込みですが、本メルマガ執筆時点ではまだ成立していません)。
【遺産分割協議】
未成年者単独では、原則として有効な法律行為をすることができません。したがって、現状では、20歳未満である相続人は、その法定代理人が遺産分割協議に参加しなければなりません。通常は親権者が法定代理人となりますが、親権者も相続人の一人である場合は利益相反が生じるため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立て、選任された特別代理人が未成年者を代理して遺産分割協議に参加する必要があります。
これが、改正後に遺産分割協議を行う場合は、相続開始日が改正前か改正後かを問わず、協議の時点で18歳以上であれば、法定代理人を立てることなく協議に自ら参加することができます。
【相続放棄】
相続放棄も法律行為であるため、現状では20歳未満の者は自らこれを行うことができませんが、改正後は18歳以上であれば可能です。
【遺言の証人】
未成年者は遺言の証人にはなれませんが、改正後は18歳以上であれば証人になることができます。なお、遺言書の作成自体は現状でも15歳からと規定されていますので、今回の改正による影響はありません。
上記以外にも、「納税猶予制度における相続時精算課税適用者の特例」や「非上場株式に係る贈与税の納税猶予制度」について、受贈者の年齢要件が18歳以上に引き下げられます。また、相続・贈与とは直接関係はありませんが、不動産売買契約や賃貸借契約、保険契約など、18歳以上であれば様々な契約行為が単独で可能となります。
一方、「飲酒」「喫煙」「ギャンブル」「養子をとることができる者」などの年齢は、改正後も20歳以上のまま据え置きですので、お間違えないように。
・既に開始した相続で、相続人に未成年者が含まれていてお困りの方
・将来、未成年者が相続人となる可能性が高いため、スムーズな相続手続きが行えるような生前対策をお望みの方
など、未成年の相続人に関する問題は、当サポートセンターまでお気軽にご相談ください。
お待ちしております。