第1、保佐人とは
保佐人とは、判断能力はあるが不十分な本人のために、不動産取引などの重要な取引などに同意権・取消権などが認められる家庭裁判所から選任される者です。
高齢者でアルツハイマーなどが理由で判断能力が不十分になり、自分の財産を管理できない場合などに、家族などが家庭裁判所に申立てをすることで保佐人を選任してもらい、本人の重要な取引などに、保佐人の同意権・取消権を求めることで本人の財産を保護する制度です。
第2、保佐人と成年後見の違い
成年後見制度とは、本人が植物状態や痴呆で本人に判断能力が全く認められない場合に、成年後見が認められる制度です。成年後見の場合は、本人に判断能力が全く認められないので、本人は契約などの行為は一切できず、成年後見人が本人に代わって代理人として本人の全般の行為を行います。
一方、保佐人の場合は、本人の判断能力は不十分ですが、本人の判断能力が全く失われているわけではありません。
保佐人の場合は、本人も取引はできますが、不動産の取引、金融機関からの借り入れなどの重要な行為は、事前に保佐人の同意が必要になります。もし、不動産取引などの重要な行為について保佐人の同意なく本人がした場合は、保佐人はその行為を後から取り消すことができます。
補助人とは、保佐人と比べれば判断力がある場合で、判断能力が多少不足する程度の場合です。補助人の場合も、重要な取引の行為のうち一部の行為について補助人に同意見・取消権が認められることとなりますが、同意権・取消権の範囲は保佐人の場合に比べれば限定的です。
第3、保佐人の選任の申し立て
保佐人の選任の申立ては、本人、配偶者、四親等内の親族が申立人になります。
主治医にアルツハイマー等で本人の判断能力が不十分で保佐の決定が相当であるという診断書を作成してもらい、家庭裁判所に診断書を提出する必要があります。
診断書の提出だけで鑑定をせずに保佐の決定が出る場合もありますが、保佐の決定を出すべきかどうか微妙な事案については家庭裁判所が選任する鑑定人の鑑定が必要になる場合があります。この場合は鑑定料として別途10万円前後の費用を家庭裁判所に予納する必要があります。
申立ての前に、主治医の方に、成年後見相当か、保佐相当か意見を聞く必要があります。高齢者の痴呆の事案では、痴呆かどうか、痴呆だとしてもどの程度の重度の痴呆かを判断するためには、長谷川式認知症スケール検査、MMSE検査などの痴呆検査を病院で実施してもらう必要があります。これらの検査は10分から15分程度で簡単にできる検査なので、病院に相談をすれば比較的容易に実施してもらうことが可能です。
また、申し立ての際に、本人の財産目録を作成して提出する必要があります。そのため、本人が不動産・預金等についてどのような財産を所有しているのか財産調査をして財産目録を作成し、申し立てをすることが必要になります。
保佐人については配偶者等の家族が保佐人として認められる場合もありますが、家族間で対立がある事案や、本人の財産が多い場合などは、弁護士などの専門家が保佐人になる場合が通常です。
第4、保佐人の権限
1、前述したとおり、本人は契約などの取引ができ、不動産取引などの重要な行為について保佐人に同意権・取消権が認められることとなります。
2、申し立ての際に、保佐人に代理権の授与を求めて家庭裁判所が代理権を認めた場合は、保佐人は同意権・取消権だけでなく、一定の行為について代理権が認められ、本人に代わって代理人として行為をすることが可能となります。
3、保佐人選任の申し立てが相当な事案としては、本人の判断能力が不十分な場合に、一部の子供が本人の通帳を事実上管理して勝手に使用してしまっているなどの事案で、本人の財産を保護すべき場合などです。このような場合は保佐人選任の申し立てとともに、保全処分の申し立てをして、保佐の決定の前に勝手に通帳を使用できないようにする手続きも同時にとる場合も多いです。
また、本人に財産等があるものの、身の回りで世話をしてくれる人がおらず、自力では財産の管理もできず、生活が困難な場合も、成年後見や保佐の申し立てをして、本人の財産を適正に管理するとともに、本人が適切に生活できるように病院・施設などの療養看護についても保佐人の方で施設・病院選びなどの環境整備をするなどという場合も保佐の手続きを利用することは有用です。
4、このようなケースの場合は、成年後見のように判断能力が全くないとまではいえない事案でも、判断能力が不十分な場合でも保佐の手続きを利用することで本人の財産等を守ることができるので同制度の利用を検討したほうがいい場合も多いと思います。
以上