1. はじめに
相続対策の一環として生前贈与を行っている方も多いかと思います。
そこでよくご質問を受けることの一つに贈与税の時効があります。
本記事では贈与税にまつわる時効と注意点についてまとめていきたいと思います。
2. 贈与税の時効
贈与税における時効期間は、国税通則法と相続税法により3段階によって分かれております。
①国税通則法第70条による時効
原則として法定申告期限から5年間。
※国税通則法とは相続税とは別に国税に関する一般的な事を定めた法律のことです。
②相続税法第36条
国税通則法にかかわらず贈与税の時効は6年間とすることができます。
③相続税法第36条第4項
偽りその他不正の行為によって免れ又は還付を受けた贈与税の時効については、贈与税の申告期限から7年間とされています。
基本的には贈与税の申告書の提出期限から6年間が贈与税の時効となってきますが、偽りその他不正の行為があった場合となると7年間の時効となります。
3. 名義預金の時効
こちらもよくご相談を受ける事項です。
民法上の贈与とは諾成契約による必要があることから、例えば、父が子供名義で毎年預金をしていてもその預金の存在をその子供が知らない場合には、受贈者(子供)によるもらったという意思表示がないことから贈与は成立していないと考えられます。
そのため、子供名義の預金が行われて数年経過していても贈与税の課税対象とされる民法上の贈与が行われていない以上、税務上の時効は成立しないことになります。
この場合は、贈与税はかかりませんが、そもそも贈与が成り立っておらず、贈与者が死亡した時には相続税の対象となってきます。
4. 偽りその他不正の行為とは?
前述したように贈与税は最大7年間の時効があります。
その7年間が適用される要件として、偽りその他不正の行為があります。
偽りその他不正の行為とは、「真実の所得を隠蔽し、それが課税の対象となることを回避するため、所得金額をことさらに過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出する行為」と最高裁で判示しています。
したがって、単に贈与税の申告書を提出しなかったという消極的な行為だけではこの偽りその他不正の行為には当たらないとされています。
また、偽りその他不正の行為は、司法上の処分となり刑事罰が科されます。
つまり前科がつくことになります。罰則としては「5年以下の懲役」もしくは「500万円以下の罰金」が科されます。
似た用語に「仮装隠蔽」という言葉もありますが、こちらは偽りその他不正の行為より「軽い」ものとなりますが重加算税の対象となります。
仮想隠蔽は行政処分なので前科がつくことはありません。
5. まとめ
いかがでしたでしょうか?
本記事をまとめると、
Ⅰ.贈与税の時効は最大7年間
Ⅱ.名義預金に時効はない
Ⅲ.偽りその他不正の行為は刑事罰となる
となります。
特に偽りその他不正の行為の定義は非常に曖昧であり判断に迷うことになりますが、そもそもそのような財産隠しは悪質な行為となりますので、ご生前にしっかりとした対策を講じるが必要となってきます。
いかに早く相続対策に着手できるか。
相続対策の鍵はそこに尽きると思います。