よく税務調査は交通取締に例えられます。常に警察署や税務署が目を光らせている訳ではなく、時間帯や場所などのポイントを絞って取締を行っています。取締を受けた人は「運が悪かった」と感じますが、気を付けていれば回避できることもあります。
例えば、一時停止の場所では必ず車を停止させ(二輪車であれば片足を地面につけ)、警察官が隠れていないか左右を確認することで対策できます。
相続税の申告書でも同じことがいえます。私は税務調査をできるだけ受けないようにするために、今回ご紹介するポイントに気を付けています。
1. 預貯金・現金の動きをチェックする
これは基本的なことですが、預貯金の明細は被相続人・相続人を含めて10年分をチェックしています。亡くなる直前に現金の引き出しがないか、名義預金や名義保険に該当するものがないか、生前贈与がないか、個人的な貸付やその後の返済がどうなっているかなどをチェックします。
そして、申告書にも「3/31福岡銀行から引出100万円」と書いて、「預貯金は見ました」とアピールします。
2. 細かい財産を計上する
家庭用財産や、介護保険・医療保険の還付金、電話加入権などは少額ですが計上するようにしています。相続税額は多少増えますが、安心料ということでお客様には概ね納得していただいております。
家庭用財産は財産価値より処分費が多いこともありますが、税務署OBに聞いたところ、「個々の財産で判別し、プラスになる財産だけの合計を計上すべき。」とのことでした。個人的にはやや納得がいきません。
3. 資料の準備をする・適切に並び替える
税務署がチェックしやすいように、書類は全てコピーして準備します。電話加入権は国税庁のページをコピーして添付しています。株価計算に使う法人税の申告書も、たとえ同じ管轄の税務署であっても添付するようにしています。資料の取り寄せで税務職員に手間をかけさせないためです。また、資料の順番は申告書に書いてある順番にしています。これも税務職員がチェックしやすくするためです。
4. 手がかりを増やす・目線を誘導する
税務署がどの順番で書類をチェックするかはわかりません。そのため、手がかりを多くしておきます。「ここの数字はこの資料から転記しました」や「別紙●●参照」などと書いて誘導します。場合によっては同じようなことを別々の書類に書くこともあります。
5. 税務署の手引き通りに書く
税務署は「申告の手引き」というマニュアルを発行しています。「申告書の書き方」的な書籍は民間でも多数発行されていますが、税務署の手引きが一番の基本だと私は思います。記載方法などは可能な限りその手引きに忠実にすることで、税務署へアピールすることができます。
6. 誤字脱字をしない・資料をそのまま転記する
これは申告書に限ったことではないですが、誤字脱字はご法度です。「介護保『健』料」といった誤変換もまずいです。ゆうちょ銀行やJAの口座を「預金」と書くのも考え物です。また、住所などの記載も印鑑証明書の通り「〇〇市××区△△1丁目1番1-101号」というように省略せずに記載した方がよいと思われます。
私自身は大雑把なО型で、生活態度についてはよく妻に怒られています。しかし、相続税の申告書の作成については重箱の隅をつつくような態度で臨んでいます。
税務調査は金銭的・時間的・精神的にかなりの負担がかかります。少しでも税務調査を回避できる可能性があれば、そこに労力をつぎ込むのは効果的だと考えているからです。
これから相続税申告書を提出される方の参考になれば幸いです。
ただ、税理士には考え方がいろいろあるので、私の方法は一つの参考として捉えていただければと思います。