皆様、土地家屋調査士という国家資格をご存じでしょうか?
土地家屋調査士とは、不動産の登記簿(登記記録)の「表題部」の新設、変更・更正、閉鎖等の代理申請を行う土地建物の表示登記の専門家です。
土地の売買を行う時や土地を融資の担保とするときなど、対象土地だけではなく、その土地の周りの土地の名義も調べます。特に現況の道路敷地の名義については、慎重に調べられます。通常は道路の敷地の所有者(登記名義人)は国又は地方公共団体となっています。所謂官有地になっていることがほとんどですが、時折、道路敷地の登記上の名義が「官有」ではなく「民有」になっている事があります。道路の中に民有地があることから、「道路内民有地」や「道路内民地」や「敷民」などと呼ばれています。なぜこのような事が起こるのでしょうか。
見た目には、完全な道路でも名義だけ民有地となっている事があります。原因は様々ですが、よく見られるのは、昭和27年以前の旧道路法の時代に造られた道路や昭和30~40年代の道路拡張や宅地分譲時に寄付予定だった土地が何らかの原因で寄付漏れになっていて、元の地主の名義や宅地分譲会社の名義が残っている場合です。他に現況の道路の付け替えが行われているものの、交換の登記が未了となっている場合もあります。
1. 他人名義の土地まで含み道路区域になっている場合
上の図で1番の宅地の前面道路の中に2番の土地があり、それが民有地となっている場合、2番が道路区域の中であれば建築基準法における接道(建築基準法第43条)をしている状態といえます。
2. 他人名義の土地は道路区域に含まれないが、前面にある場合
上の図では道路区域に2番が入っておらず、舗装されていても道路に接道しているとはいえない状態です。土地利用や土地の資産価値を考える場合、道路への接道は重要な要素といえます。
土地家屋調査士が業務を行う場合、「道路内民地」の一番の問題点は、道路管理者が境界立会を行えないということです。道路管理者はあくまで「道路」の管理者であり、土地の境界の管理者ではないからです。土地を2筆以上の土地に分筆する場合や土地の地積を正しい地積に更正する登記を行う場合、隣接土地の所有者に境界立会を求めますが、通常の道路の立会は道路管理者が行いますが、「道路内民地」の場合、道路内民地の所有者に境界立会をしてもらわなければなりません。「道路内民地」の登記名義人は、最後の所有権の登記が50年以上前であることも多々あり、見つけ出すのが困難な場合があります。その場合、短期間で分筆登記や地積更正登記が行えないという事態になります。道路内民地の所有者や相続人が見つからない場合は、「筆界特定制度」などを利用し、時間をかけて分筆登記や地積更正登記を行うということとなります。
相続予定の宅地の前面道路が「道路内民地」である場合、いざ処分をしようとしても長期戦とならないよう、事前にわかっていればお近くの土地家屋調査士に相談されることをお薦め致します。