こんにちは。
司法書士・行政書士・土地家屋調査士の西出です。
昨年12月1日に、税理士の山方先生が本レポートにて、
「土地の売買契約期間中に相続が起こったら?」というコラムを書かれていました。
先月、私も似たような事例がございましたので、ご紹介させて頂きます。
<事例>
夫 A
Aの妻 B
AとBの子 C(未成年者)
ハウスメーカー D社
銀行 E銀行
令和1年5月10日 A・BとD社間で工事請負契約を締結
令和1年5月30日 A・Bは、上記の家を建築するために、A・Bを連帯債務者とする、
E銀行のつなぎ融資で、甲土地を購入(持分は、2分の1ずつ)
令和1年6月10日 建築確認済証が発行される
(A・B連名であるが、持分は記載されない)
(建築中)
令和1年8月10日 Aが死亡
(建築中)
令和1年9月30日 建物完成 → 検査済証が発行される
(A・B連名であるが、持分は記載されない)
令和1年10月1日 土地購入費用・建物建築費用の全額をまかなえる金額で、Bのみを
債務者とするE銀行の承認がおりる。
この時点で、
・建物表題登記
・所有権登記名義人住所変更登記
・所有権保存登記
・抵当権設定登記
を、D社から依頼された訳ですが、普段通りにはいきませんので、解決しなければならない論点を整理しましょう。
論点ⅰ
土地の名義がA・Bの各2分の1ずつとなっているため、E銀行の実行にあたって、これをBの単独名義とする必要がある。
そのためには、被相続人Aについて、遺産分割協議が必要となる。
しかし、Cが未成年者であるため、遺産分割協議に参加出来ず、家庭裁判所の特別代理人の選任の審判が必要となる。
論点ⅱ
E銀行の実行にあたって、建物表題登記をBの単独名義でしたいが、建築確認済証及び検査済証がA・Bの連名で出てしまっている。
この状態で、Bの単独名義で建物表題登記をするためには、本来、Aの承諾書(印鑑証明書付)が必要となるが、Aが亡くなってしまっている。
検査済証が出る前迄であれば、建築主をBとする変更届を出すことで、検査済証の名義をBと出来るが、検査済証が発行された後は出来ない。
従って、A・BとD社で締結された、令和1年5月10日付の工事請負契約の権利義務一切をBが相続する旨の遺産分割協議が必要となる。
しかし、Cが未成年者であるため、遺産分割協議に参加出来ず、家庭裁判所の特別代理人の選任の審判が必要となる。
従って、お手続きの順序としては、下記のようになります。
①遺産分割協議書(案)を作成
②①の遺産分割協議書(案)で遺産分割協議を行うための特別代理人の選任の申立を行う
(今回は、Cの親戚を特別代理人として申し立てた)
③特別代理人が選任され、遺産分割協議を行う
④③の遺産分割協議書と戸籍を添付して、甲土地の相続登記を行う
⑤③の遺産分割協議書と戸籍と工事請負契約書を添付して、新築建物の建物表題登記を行う
⑥抵当権設定登記を申請して、E銀行の最終実行
⑦お引渡し
通常の新築建物の最終実行は、クロス貼り完了から2週間ほどで完結するのですが、今回は、数ヶ月が必要となりました。
非常にレアなケースですが、建物の建築は、数ヶ月から1年に及ぶ場合もありますので、今後もあり得るケースかと思います。
今回、もし、遺産分割協議書(案)作成時に、建物の帰属を記載し忘れると、建物表題登記を申請できず、再度、特別代理人の審判が必要となり、更にお時間がかかってしまいますので、くれぐれも注意が必要です。
このような事例では、司法書士・土地家屋調査士の両者の視点で、お手続きが出来る専門家に任せるのが良いのでは無いでしょうか。