皆様こんにちは。
税理士の太田圭子です。
今後も益々皆様のお役に立つ情報を分かり易く発信していきたいと思います。
昨年6月に民泊新法が施行されてから1年が経過し、民泊の届出件数は2万件に達する勢いです。宿泊数も東京都、北海道、大阪府、福岡県、愛知県など全国各地で増加しています。
賃貸では利回りの低下した築古物件であっても、訪日外国人が好む和テイスト民泊にリノベーションし、高収益物件に生まれ変わっている例もあるようです。
そしてこの民泊ビジネスが相続税を引下げる可能性を秘めていることをご存知でしょうか?
以下ざっくりと解説します。
1、小規模宅地の特例
相続税には「小規模宅地の特例」というものがあり、一定の要件をクリアすれば、宅地の評価が5割または8割マイナスできます。
①自宅の宅地‥‥‥330㎡まで8割減
②事業用の宅地‥‥400㎡まで8割減
③貸付用の宅地‥‥200㎡まで5割減
※①の自宅用と②の事業用は併用が可能。それ以外の組み合わせは限度面積まで選択制となる。
特例適用対象となる宅地が賃貸用の場合は200㎡までの部分が50%しか減額できませんが、民泊ビジネス用の宅地ならば、事業用として400㎡までの部分が80パーセント減額できる可能性があり、①の自宅の宅地とのダブル適用もできます。
どの程度の効果があるのか具体的に見ていきましょう。
2、貸家をリノベーションして民泊経営した場合、宅地評価の減額効果は大きい!
簡単な例で説明します。
(例)相続財産の宅地の評価額
①自宅宅地 330㎡ 6千万円
②貸付宅地 400㎡ 2憶円
(1)貸家のまま相続が発生して、特例を受けた場合の評価マイナス額
この場合、自宅の宅地と貸付用の宅地、どちらも特例の対象となり得ても、選択できるのはどちらか一つだけとなります。従って通常有利な(減額できる金額が大きな)方を選択します。
①自宅宅地 6千万円×330㎡/330㎡×80%=4,800万円
②貸付宅地 2憶円×200㎡/400㎡×50%=5,000万円
従って②の方が有利なので②を選択し、評価減は5,000万円
(2)貸家を民泊にリノベーションして民泊ビジネスをスタートした後、相続が発生した場合
①自宅宅地 6千万円×330㎡/330㎡×80%=4,800万円
②事業用宅地 2憶円×400㎡/400㎡×80%=1憶6千万円
自宅と事業用の宅地の特例はダブル適用ができるため、評価減は①②合計で2憶800万円となります。(1)との差額は1憶5,800万円です。
従って、制度を適用できた場合の相続税節税効果は非常に大きいといえます。
3、要件を満たすのは結構大変、事業規模も必要
こうしてみると、節税効果の高そうな民泊経営ですが、宅地評価を8割下げるには複雑な適用要件を満たす必要があります。適用要件の見直しも相次いでいますので必ず税理士に相談してください。
また、賃貸マンションが空室のときだけ民泊とするなど、事業とはいえない規模では特例は認められません。一方で、旅館業法に基づく民泊のように本格経営となると、固定資産税については住宅用地の特例が受けられなくなり、税負担が増加してしまうので、メリット、デメリットをきちんと考える必要があります。
4、まとめ
オリンピック開催も近づき注目を集める民泊ビジネス、収益事業としても相続対策としても魅力があります。但し、税法も含め制度が追い付いていない部分もあるため必ず専門家の意見を参考に検討してみましょう。