売却した不動産の申告、取得費が分からないときはどうすればいいの!?
皆様こんにちは、税理士の太田圭子です。消費税導入とともに歩んだ平成ともいよいよお別れですね。
世の中の変化のスピードはどんどん速くなり、それに伴い税法も次々に変わっていきます。令和の時代も皆様に分かり易く、お役に立てるコラムを発信していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。
さて、今回のテーマは「売った不動産の取得費が分からないときどうすればいいの!?」です。
実はこの質問を受けることは結構多いのです。当事務所での具体的な対応も交えて解説していきましょう。
1、概算取得費を使う
国税庁HPのQAには以下のような回答がUPされています。
「買い入れた時期が古いなどのため取得費がわからない場合には、取得費の額を売った金額の5%相当額とすることができます。 また、実際の取得費が売った金額の5%相当額を下回る場合も同様です。例えば、土地建物を3,000万円で売った場合に取得費が不明のときは、売った金額の5%相当額である150万円を取得費とすることができます。」
つまり、取得費がわからないときは、売った値段の5%を取得費として計算してよいと、いうことです。先祖代々の土地を売却する場合などにはこの「概算取得費」を用いた方が実際の取得費よりも有利になることが多いでしょう。
しかし、例えば亡くなった親がバブル時代に買った不動産を相続した後、売却するケースなどにおいては、取得価額が分からないからといって、この概算取得費を用いることはお勧めできません。譲渡所得が実際よりも過大に計算されてしまい、その結果、申告する税金も実際に納めるべき金額よりも多くなってしまう可能性が高いからです。
2、他に方法は無いのか?
取得当時の地価等から判断して、概算取得費(売価の5%)を用いると実際の取得費よりも低い金額になると想定されるときには、その他の方法により、取得価額を計算することも可能です。いくつか方法があります。
①簡単にあきらめず書類を再度探してみましょう
当事務所では、再度譲渡契約書や参考になる書類を探すことをお勧めしています。不動産の売買契約書を実際に捨ててしまう方は少なく、しっかり探せば出てくることも多いのです。また、仲介した不動産会社に問い合わせてみるのも有効です。
②参考になる資料から取得価額を計算
どうしても売買契約書が見つからない場合、他に取得価額の参考になる資料はないか検討しましょう。例えば借入をして買った不動産ならば、抵当権が設定されていることが通常であり、登記簿謄本に記載された債権額は参考になります。物件が分譲マンションや建売住宅ならば分譲時のパンフレットやチラシも参考になるでしょう。
③その他の方法
国税不服審判所の裁決事例集には課税庁が、取得費が分からない場合、概算取得費に代えて合理的と判断した取得費の計算方法が記載されています。簡単にいうと近隣の売買事例から算定する方法や、建物については建築物単価、土地については市街地価格指数を基に計算する方法です。但し、あくまで個別の事例についての見解ですので、どんな場合にでもこの計算方法を認めているというわけではありません。
3、譲渡所得の計算は慎重に
以上のように譲渡した不動産の取得費が分からない場合、概算取得費以外にも計算の方法があります。譲渡所得の計算は、取得費の計算方法や特例の活用判断で大きく税額も変わりますので、必ず専門家に相談しましょう。特に③で紹介した市街地価格指数などを用いる場合は税務上認められなかった事例も多く、慎重に判断することが必要です。