「相続と増築?関係有るんですか?」と思われるかも知れませんが、最近、父から相続した土地・建物を、売却しようとしたところ、父が生前に増築工事をしており、且つ、その増築の登記(以下、「建物表題変更登記」といいます。)が未登記であった為、急いでやって下さいという相談が数多くあります。
例えば、
被相続人 A
Aの妻 B
Aの子 C
被相続人A所有の土地 甲土地
被相続人A所有の建物 乙建物
という事例で見ていきましょう。
相続人Bと相続人Cで遺産分割協議を行い、被相続人Aの所有であった甲土地及び乙建物を、相続人Cが相続する旨の遺産分割協議が成立し、遺産分割協議書を作成したとします。
その後、その遺産分割協議書と戸籍等を添付して、被相続人A所有の甲土地及び乙建物を、相続人Cの名義とする相続登記を行います。
そして、いざ売却しようという段階になって、買主や金融機関から、建物表題変更登記を求められ、相続人Cが自ら申請人となって、急いで建物表題変更登記を行うことになります。
この建物表題変更登記を行うにあたって、肝となるのは、「その増築部分の所有権が誰にあるのか?」を証明する「所有権証明書」を如何に揃えるかです。
本事例では、増築部分の所有権がCにある事を証明する「所有権証明書」を揃える必要があります。
具体的にいうと、
①増築部分の所有権がそもそも被相続人Aにあった事。
②その増築部分の所有権を相続人Cが相続した事。
この2つの証明が必要になります。
①については、
増築工事の建築確認概要書、工事業者の工事完了引渡証明書、増築工事代金の領収書、評価証明書・名寄帳・納税証明書等がこれにあたります。
②については、
戸籍等と遺産分割協議書等がこれにあたります。
しかしながら、相続登記を行ったときの遺産分割協議書には、「乙建物をCが相続する」旨の文言は入っているのですが、「増築部分もCが相続する」旨の文言が入ってないケースが殆どです。
この場合、戸籍だけでは、増築部分の所有権をBとCが2分の1ずつ相続した事実のみの証明になってしまう為、増築部分の所有権もCが相続する旨の遺産分割協議書(実印・印鑑証明書添付)を再度作成するか、又は、増築部分の所有権もCが相続した旨の証明書(実印・印鑑証明書添付)をB(又はその他の第三者)が作成する必要があり、結局二度手間となってしまいます。
ですので、弊社では、遺産分割協議書の作成にあたっては、未登記の増築部分がある場合には、その増築部分も含めてCが相続する旨の文言を入れておく事をお勧めしております。
何故なら、他の相続人から、もう一度、実印と印鑑証明書を取得出来ないケースもあり得るからです。
因みに、このことは、未登記の附属建物がある場合についても同じ事が言えます。
実際のところ、未登記の増築部分や未登記の附属建物の特定、登記の可否は、司法書士だけでは判断が難しいかと思いますので、土地家屋調査士と協力して、遺産分割協議書作成の段階から、未登記の増築部分や未登記の附属建物の有無を確認し、今後、建物表題変更登記をする可能性がある場合、事前に調査・測量を行い、その内容を遺産分割協議書に記載しておいた方が良いでしょう。