相続に関して、きちんと親子で話されている方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。
親が「相続対策はまだ自分には早い」と考えている場合、話を切り出すのを躊躇するお子さんも多いのではないでしょうか。
しかし、それは「遺書」と「遺言」を勘違いしている人が多いのです。
「遺書」は亡くなる前に残す手紙のようなもの、「遺言」は自分が亡くなった後に財産を渡す相手を決められる法律行為なのです。
英語で遺書は「letter」、意味は手紙です。でも遺言は「will」、意思や未来という意味です。つまり遺言はその人の未来を決めるものなのです。相続の話を切り出したときに親から誤解されそうであれば、ぜひこのエピソードを一緒に話してみてください。
今回は、子から親へ、相続の話を上手に切り出す方法をお伝えしたいと思います。
相続の話に繋げやすい話題とは
【1】怪我や病気をした場合の話
Aさんの場合
母さん達のかかりつけの病院って、どこ?
万が一のときのために知っておきたいんだけど…。
近所のO山病院にお世話になってるよ。
あぁ、あの小学校の近くの病院ね。
ところで最近の具合は、どう?
腰が痛いけど、特に問題なく過ごせてるよ
それなら良かった。
同級生の山田君のお母さん、急に脳卒中で亡くなられて、遺産相続の準備とか全然してなかったから大変だったみたい。
母さんたちはまだ元気だけど、うちも何かあった時の備えとして、一緒に考えておかない?
そうだねぇ。備えあれば憂いなしだもんね。
今度の日曜M子(妹)が帰ってくるからそのときに一緒に話してみよう。
【2】お孫さんの教育計画の話
家族、特にお孫さんの話をしましょう。
保育園入園~大学入学までのストーリーを話します。
その中で例えば「小中一貫の学校に行かせようと思っている」とか、「大学は東京の大学に行かせたい、又は海外へ留学させたい」という話をします。そうすると贈与の話に繋げられると思います。
その際、あらかじめ税法上の制度「教育資金の一括贈与の特例」などを勉強しておき、説明することができるといいでしょう。
受験前やお正月のタイミングがおすすめです。
B子さんの場合
お父さん、お母さん、遊びにきたよー。
よく来たねぇ。ゆっくりしていかんね。
来月から息子を保育園に入れようと思ってるの。
その後は教育制度が充実している●●学園に入学させるつもり。今はお受験も厳しいから早めに準備しておかなきゃ。
あらまぁ。それは大変だね。
でも可愛い息子のためだからね。
頑張らなきゃいけないね。
私たちもできることがあれば協力するよ。
ありがとう。そう言ってもらえると助かる。
中学、高校、大学と学費も大変なのよ。
それでね、生前贈与の相談なんだけど・・・
【3】相続が原因でトラブルになった話
身近な人の話や、他人から聞いた話でも構いませんので、相続でトラブルになった話をされるといいでしょう。もし自分達が同じ立場になったらどうなるのかを実感するよい機会になります。
その際、あらかじめ税法上の制度「教育資金の一括贈与の特例」などを勉強しておき、説明することができるといいでしょう。
受験前やお正月のタイミングがおすすめです。
C子さんの場合
私の同級生のD美ちゃんって覚えてる?
覚えてるよ。小学生のときによく遊びよった子でしょ。
そのD美ちゃんなんだけど、こないだ久しぶりに会った時にすごくやつれてたの。
どうやら、遺産争いが起きていて大変みたい。兄弟同士で裁判で争っているらしいわ。
うちも相続争いで兄弟仲が悪くなったらいやだなって思ったの。
ねぇ、お母さん、うちの遺産相続まわりってどうなってるの?
そうだねぇ。実はまだ遺産相続の準備は早いって思ってたんだけど、いつどうなるか分らないし、あんたたちに迷惑かけないようにちゃんと準備しとかなきゃね。
【4】セミナーへ一緒に行き、感想を話す
ご両親をセミナーへ誘って一緒に行きましょう。もちろん、私たちが行っている相続セミナーもありますし、それ以外にも、投資セミナーや医療セミナー、政治セミナーにも積極的に行ってみることをお勧めします。最近は落語家が面白い相続の話をする場合もあります。気軽に行けるものから始めてみてください。
そのセミナーのあとには、どう思ったのかの振り返りを行ってください。ご両親も相続について考えていない訳ではなく、きっかけがなかったり知識がなかったりすることで先に進めない方が多いのです。なので知識を得ることをきっかけに考える方も多いです。
D男さんの場合
父さん、今度の日曜空いてるなら一緒に出かけない?
D男が誘うなんて珍しいな。
何か父さんに買ってほしいものでもあるのか。
違うよ。
大学時代のゼミの先輩で今弁護士やってる人が遺産相続に関するセミナーをやるんだ。今は50代から準備する人もいっぱいいるらしい。初心者にも分かるような簡単なセミナーらしいから、一緒にどうかなって。
50代って、ちょうど父さんくらいじゃないか。そうだな、せっかくD男が誘ってくれたし、一緒に行ってみるか。
D男さん親子はセミナーに参加してみることにしました
セミナー参加後・・・
結構若い人も多かったね。
今日のセミナーはどうだった?
遺言なんてその気になればすぐ準備できると思っていたが、意外に準備が複雑でたくさんあるんだなぁ。
現金だけでなく、不動産、株、生命保険、相続に関係ありそうなものを一回整理する必要があるなぁ。
そうだねぇ。一回専門家に相談した方が
いいかもね。
僕の先輩に話を聞いてもらえないか、お願いしてみるよ。
いかがでしたでしょうか。4パターンの話題をご案内しましたが、使えそうなものはありましたか?
遺産相続の話に繋げやすい話題をまとめると、以下になります。
相続の手続きは確実に
ご両親が相続について考え始めたら、まず専門家に相談することをおすすめします。
自分が得た知識の中で自分なりに遺言を作ってみたり、贈与をしてみたりする場合、書類の不備や記載事項が間違っているケースも多くあります。
専門家に相談する場合も、税金のみ・法律のみの知識を持った専門家ではなく、不動産・生命保険・社会保険・株等の幅広い知識をもった専門家をおすすめします。
相続に関する法律は改正されることもあるので、常に新しい知識があり、豊富な経験のある専門家をおすすめします。