登記手続きのうち、相続による不動産の所有権移転登記には、いつまでに申請しなければならないという法律上の期限はありませんので、放置していても、過料(罰金)等の制裁を受ける可能性はありません。
しかし、登記手続きの種類によっては、期限内に登記手続きをせずに、放置していると制裁を受ける可能性があるものが存在します。
不動産登記法では、建物を新築したときや取り壊したときなどには、その日から1ヶ月以内に建物表題部に関する登記を申請しなければならず、申請しないと10万円以下の過料の対象になると規定されています。
会社法では、会社の登記されている事項に変更があったときには、その日から2週間以内に登記を申請することが義務になっていて、これを怠ると代表者に対して100万円以下の過料が科せられる可能性があります。
よくあるのが、役員の任期がきれているのに登記をしていないケース、代表取締役の住所の変更は登記しなければならないことに気付いていないケース、親族等を役員に入れていたことを忘れていて、その方が亡くなったのに変更登記が放置されてしまっているケースです。
このような過去に生じた役員に関する変更登記を長期間放置したまま、会社の経営を引き継いだ相続人が新代表者として、これらの登記手続きを一括して処理する際には、高額な過料を負担しなければならないこともあります。
また、会社の登記では、12年間何も登記を申請していない株式会社は、法務局の職権で解散したものとみなされてしまう場合があります。
過料の制裁の有無や金額の決定については、法務局の登記官から裁判所に対して、放置の内容が報告された後、裁判所で審理され、過料が科されるものと決定された場合に、代表者に通知されることになります。
つまり、登記の期限を過ぎても、必ずしも過料の対象になるわけではありません。
一説には、建物表題部の登記を放置したことによって、過料が科せられた例は存在しないともいわれていますし、会社の登記の放置による過料の制裁の有無や金額にもばらつきがあり、明確な基準は不明ですが、 放置した期間が長いほど高額な過料が科される危険性が高まると思われますので、早めの登記手続きをお勧めします。