去る12月8日、政府与党から2017年度の税制改正大綱が発表されました。今回の最大の目玉は所得税の配偶者控除の見直しだといわれ、様々なメディアがこれに関して大々的に取り上げています。配偶者控除の見直しについてはそれらを参考にしていただくとして、当レポートでは、相続税・贈与税をはじめとしたいわゆる資産税についての主な改正ポイントを取り上げておきます。
①相続税又は贈与税の納税義務者の見直し
現行では、国外に5年超住所を有して(住んで)いる者が、同じく国外に5年超住所を有して(住んで)いる者に対して国外にある財産を贈与した場合は、贈与税は課税されません。
この国外居住要件が、5年超から10年超に改正されます。つまり、親から子への贈与であれば、親子ともども10年超国外に住み、その時点で親が国外に保有している財産を子に贈与する以外に、子が贈与税を免れる術は無くなります。免れるケースは極めて限られるでしょう。
相続税についても同様に改正です。
この改正は、平成29年4月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得する財産に対して適用されます。
②タワーマンションに課税される固定資産税・都市計画税・不動産取得税の見直し
マンションの各戸室の固定資産税は、各戸室の床面積に応じて課税されます。従って、床面積が同じであれば、1階の住戸も40階の住戸も税額は同じです。ところが取引価格は、床面積が同じでも1階より40階の住戸の方がはるかに高いのが実態です。取引価格には眺望の良さなどが反映されるからです。それが、不公平感を生んでいました。
そこで、高さが60mを超えるタワーマンション(概ね20階建て以上)については、階が1つ上がる毎に10/39を加えた割合だけ税額が上がるように改正します。具体的には、40階建てのマンションの場合、真ん中の階を現行の税額と同額とし、40階は5%増額、1階は5%減額となります。1階と40階とを比べると、10%の差です。40階建てよりも高いマンションの1階と最上階との税額の差は10%よりも大きくなり、低いマンションでは差は小さくなります。また、各戸室の天井の高さや附帯設備の程度等に著しい違いがある場合には、その差異に応じた補正も別途行うようです。
この改正は、平成30年度から新たに課税されるタワーマンション(ただし、平成29年4月1日前に売買契約が締結された住戸を含むものは除く)について適用されます。
都市計画税・不動産取得税についての取扱いも、これと同じです。
なお、今回の改正はあくまでも固定資産税の改正であって、相続税を算出する際に使われる固定資産税評価額が改正されるわけではありませんので、タワマン節税(高層階の部屋は取引価格の割に相続税が安いため、節税対策となる)は生き残ります。ただし、国税庁は2018年度税制改正で高層階の相続税も重くすることを検討しているようです。
③取引相場のない株式の評価の見直し
上場されていない会社の株式の評価方法が改正されます。
非上場会社の株式を評価する際には、同業種の上場会社の株価を一定程度反映させる「類似業種比準価額の計算」というのが行われるケースが多いのですが、その際にみるのは「配当金額」「利益金額」「純資産金額」の3つの要素です。そして現行では、この3つの要素うち「利益金額」を他の2つよりも重視して計算しなければならない企業が大半となっています。
今回の改正で、3つの要素を全て均等にみることとします。これにより、利益の大きな非上場企業の株価は従来よりも下がることになります。
平成29年1月1日以後の相続等から適用されます。
④広大地評価の見直し
相続税評価額の算定において、一定の条件に合致した広い土地(原則、3大都市圏で500㎡以上、それ以外の地域で1,000㎡以上)の相続税評価額は、広大地評価という特別な評価方法が認められ、通常の路線価評価に比べてかなり低くなります。ただし、条件に合致しているかどうかを判断することが極めて難しく、また、減額割合を決める要素が土地の面積のみ(面積が大きくなるのに比例して減額割合も大きくなる)であることが問題視されていました。
そこで、広大地の適用要件を明確化するとともに、面積だけではなく形状等の土地の個性をも反映させて評価する方法に改正します。ただし、これ以上の具体的な改正内容についてはまだ明らかになっていませんので、今後の情報が待たれるところです。
平成30年1月1日以後の相続等から適用されます。
税制改正大綱の内容は、2017年の通常国会に法案として提出されます。3月末までに大綱の内容どおりに成立するのが通例です。