父が亡くなり相続が発生しました。相続人は兄と弟の2人。
財産は自宅、賃貸物件1棟、現金1,000万円程度でした。2人は話し合いをして、兄が父親と同居していましたので、兄が自宅と現金を取得します。弟は賃貸物件を受け取ることにしました。それがほぼ同じ評価と判断して分け方を決めました。
ところでこの不動産の価格はどのように評価されるのでしょうか?
不動産評価は「相続税評価」で算出します。土地は路線価、建物は固定資産税評価です。よく時価(売却価格)の8割が相続税評価と言われています。
更に賃貸物件の場合は、土地は貸家建付地評価で1~2割減、建物は借家権割合を差し引く評価ですので3割減となります。この場合は入居率100%で評価しています。入居率が50%であれば差し引く割合も半分になります。そして「小規模宅地の評価減の特例」まで使えば、賃貸用土地の200㎡まで50%引くことができます。
では今回の賃貸物件の相続税評価が5,000万円とした場合に、実際の売却価格はどうでしょう。
賃貸物件の概要は以下の内容です。
■構造:木造2階建
■築年数:21年
■間取:ワンルームタイプ
■戸数:10戸
■平均家賃は:5万円
賃貸物件の売却価格を査定する場合は、収益還元法を利用するケースが一般的です。これは年間の家賃収入から逆算して売買価格を査定する方法です。不動産を投資商品と考えます。その時に重要になるのが利回りで、年間の家賃収入から売却価格を割って出すものが利回りといい、一般的に不動産の想定利回りは地域にもよりますが5%~10%の間が最近の不動産市場となっています。
ではこの物件を査定してみます。
■年間集金額は600万円(5万円×10戸×12ヶ月)
→利回り 5%・・・1億2,000万円
→利回り10%・・・6,000万円
となります。この物件は利回りが5%違うだけで6,000万円もの差がでます。
では今回のケースで兄弟が同額で分けた場合、賃貸物件をもらった弟は本当に同額だったのでしょうか?
となんと6,000万円の差ができてしまいました。これでは同じ評価ではありませんね。
ということは、この遺産分割では同じ価格にする為には、賃貸物件を受け取った弟が、兄に相当の代償金を払わないといけません。または賃貸物件を共有しないといけなくなります。
このように賃貸物件が遺産分割の中にある場合の遺産分割は、相続税評価でなく分割する場合の評価も必要になります。この評価ができるのはイメージとして不動産鑑定士を考えそうですが、私達相続サポートセンターでも査定は可能です。もしよければ一度ご相談ください。