相続による登記名義の変更には期間の制限がないことから、先祖代々の不動産(山林、田畑、生家の土地建物など)の登記名義が、亡くなられた祖父母または曾祖父母のままになっていて、誰も登記事項証明書(登記簿謄本)を見ることもなく、数十年が経過してしまっているケースがあります。
二次相続の発生や代襲相続人の関与などによって、所有者の名義変更の手続きが複雑になることも問題ですが、大昔の担保権や仮登記がでてくるとさらに厄介です。
これらの権利が既に消滅したものであれば、簡単に抹消できると思われがちですが、不動産登記法上は、原則、担保権や仮登記の名義人に印鑑を押してもらわないと抹消することができません。
もし、当該名義人が死亡している時は、その相続人全員に印鑑を押してもらわなければならず、協力が得られない場合には、裁判所に抹消登記手続きを請求する訴えを提起するなど、過分な労力を費やさなければならないこともあります。
なお、名義人の行方が分からない場合は、担保権の中でも抵当権に限り、「休眠抵当権抹消」という簡易な方法によって解決できる場合もありますが、一概に抵当権であれば大丈夫とは言えません。
また、抵当権以外の権利(根抵当権や所有権仮登記)の抹消については、相手の協力が得られない場合と同様に、裁判手続きが必要になってしまいます。
時間の経過によって、新たな相続やその他の事情が生じて手続きが更に複雑になる前に手を打つことが重要です。
先祖代々の土地建物を大切に承継していくため、まずは、登記事項証明書を取って内容を確認してみましょう。